lycanthropy

版権、血液、同性愛、貪欲に何でも描きます、カヲスブログ。 ※18禁

2010'02.02.Tue
▼内容について
  
  CP:銀時x桂 ボーイズラブ
  作風:現代ギャグパロディ
  R18 うんこ 大学生と社会人(年齢差はなし) オカマ
  ※完結していません。


生き意地

 電車のホームは異常に寒い。ぶくぶくに着膨れしてもまだ寒いのは、長い髪の毛がじっとり濡れているからだ。スーパーに寄ったのがまずかった。まっすぐ帰途についていれば、濡れずに済んだのに。そもそも、今朝のお天気お姉さんの言うことを聞いて、折り畳み傘を鞄に放り込んでおけばこんなことにはならなかった。おととい濡れたまま放り出して置いたのを、せっかくエリザベスが干しておいてくれたのに。
「ぶえっくしょん!」
 今更どうにもならない自分のミスをじくじくと考えていたら、漸く目の前に電車が滑り込んできた。車内がそれほど混雑していないのは、今日が祝日の夜だからだろう。寒い。普段の今頃なら、帰宅ラッシュでスシ詰め状態の列車がやってきて、即座に暖を取れるが、すかすかの車内の気温は外とそれほど変わらない。せめて椅子に設置された暖房に当たろうと空席のある優先席に向かうと、手袋と携帯がポツンと置かれていた。忘れ物だろうか。周りに所有者らしき人物が見あたらないので、とりあえず席に座る。そのまま背もたれに身を預け、目を閉じて向こう一週間のスケジュールを思い浮かべた。明日は朝から茨城行きのレンタカーを一本配送して、その後本社戻しの車で東京までもどってきて……。忙しければ残業。最近入った新しい社員が早くも勤務を減らして辞めそうになっているから、桂が早く上がれる可能性は低い。今日から五連勤で、万事そんな感じだ。俺、なんでこんなことしてるんだろう。ペットシッターの学費を稼ぐ目的で始めたはずのアルバイトがいつの間にか社員になり、このままずるずると勤めるハメになりそうな感じだ。給料は悪くないが、正直やりがいはない。アフターファイブなんて夢のまた夢だし、休日はくたびれて眠るだけだ。こころを癒してくれるのはペットのエリザベスだけである。
「はあ」
 ため息をついて意識を車内にもどすと、対面の席に座った高校生の二人組みがぼそぼそと何かを相談している。こちらを見ているので何かと思ったら、どうもソファのふちにおいてある手袋と携帯を気にしている様子だ。
「ねえ、絶対ちがうって。あの人のじゃないよ。忘れ物だって。だから駅員さんに届けてあげようよ」
「やめなよ~もしあの人のだったらどうすんの~関わるのよそうよ。なんかあの人、暗いし。」
 聞こえている。このまま黙っているのも癪だし、自分から声をかけた。

「あのう、これは僕のではないので。」

 一瞬の沈黙のあと「きこえてたよ~」という小さなささやきが聞こえた。結局二人組みは降りてしまい、手袋と携帯だけがポツンと残された。正直面倒くさいと思ったが、隣に座ったおばさんがさも「あんたが持っていきなさいよ」という目で見るので、仕方なく駅に届けることにした。
 最寄り駅で降り、駅員に声をかけようと改札に来てみたら、酔っ払いの喧嘩で取り込み中だった。見知らぬ携帯と手袋を手に突っ立っているのも間抜けだし、酔っ払いの喧嘩に巻き込まれたらたまらない。携帯を見て、電池の残量を確認すると、まだたっぷりあるみたいだ。人の携帯を弄ることに抵抗はあったが、疲れた頭と好奇心に促されて、桂はアドレス帳の一番初めにあった番号をプッシュした。

プルルルルル……

 発信音は鳴りっぱなしで、全くでない。やっと出たと思ったら、女の声がどなりつけてきた。
「あ…」
「もう二度とかけてくんな!」
ガチャッ
ツー……:ツー……
 小さく舌打ちをして次の番号をかける。今度は老婆の声で「金なら無いよ」という声が虚しく響いた後、すぐにまた通話が切れた。
 どうなってるんだ……。
 この携帯の持ち主はよほど問題のある人物なのだろうか。やはり、忘れ物は駅員に押し付けるのが常識だったと後悔しながら、これで最後と、三つ目の番号をプッシュする。しばらくの発信音の後、通話が繋がった。
「はい」
「あ、あの……電車の中で携帯を拾ったんですが、この番号を知っていますか?」
「あー、はいはい。ご親切にどうも。どこの駅ですか?」
「今、中野ですけど」
「え?中野?あー、じゃあ、ご親切ついでにもう少しそこで待っててもらえませんか。俺、今から五分で行きますんで」
「いや、あの、駅員さんに……」
「それじゃすぐに!」
「あ!ちょっと!」
 プッ、と無常な音を立てて電話が切れた。このまま放り出して帰ってしまうのも気が引ける。仕方がない。待つか。

         ※

 腕組みをしてたつ右足がいらいらと地団太を踏む。確か五分と言ったはずだが、もうかれこれ二十分、駅の片隅に突っ立っている。見ず知らずの人間の為に、何で俺がここまでしなくちゃならないんだ。だんだんいらいらしてきた。明日も仕事がある。もう放り出して帰ろうと、手袋と携帯を窓辺に置いて、凭れていた壁から身を浮かそうとすると、そこへ「あ、携帯の人ですよね?」という声が掛かった。チンピラのような足取りで歩いてきた男は、しきりに頭を掻いて、なんだかだらしない感じだ。
「いやー、すいませんね!待たしちゃって。ちょっと取り込んでたもんだから」
 五分でと言ったからには五分で来い!と思ったが、へらへらとしまりのない顔を殴りつけてやりたい衝動に駆られながらも、ぐっと抑えた。
「いや、構いませんよ。これが携帯と、手袋。確かに渡しました。じゃ僕はこれで」
「あー、ちょっと待ってくださいよ。何かお礼がしたいんで。良かったらよって行きません?おでん、あるんですけど」
 おでん……。
 これから帰宅して夕飯を作ることを考えると、魅力的な誘いではあるが、見ず知らずの人間の家に上がりこむのは常識的にどうだろう。何か魂胆があるのではないだろうか。実は仲間が待っていて、財布からなにから身包み剥がされるとか……。桂がうじうじ考えていると、目の前の天パ男はひょいと下から顔を覗き込んでニヤニヤと適当なことを言い始めた。
「あ、今ちょっと「おでん、食べたいな~」って思ったでしょ?そうでしょ?いいよね~、おでん。こんな寒い日にこたつ囲んで食べるおでん、最高」
 こたつ……。
 うんうん、としきりにうなづく男の横で、桂はだんだん男の家に上がりこむ方向で自分のスケジュールを組み立てなおしている。
「あ、来る?来ることにした感じ?よし。じゃあ行こう。お兄さん、こっちこっち」
「あ、ちょっと……」
 持っていた鞄をむしりとられ、先にたってずんずん進んでいく男を追いすがりながらも、桂はすでに頭の中でこたつを囲んでおでんを食べる幸せな図を頭の中に思い描いていた。

        ※

「あー、食った食った」
 天パ男は見るからに膨れた腹を撫でつつ、口に咥えたようじで器用に歯の隙間をつついている。おでんは思いのほかうまかった。おでんなんてコンビニのカップ入りのものしか食べない。だしが良くしみこんでいて、今度スーパーで買ってみようとぼんやり思いをめぐらせる桂である。それにしても、
(汚い部屋だなあ……)
 ぐるりと見回した部屋の壁はなんだかよくわからないシミで渋い色に変色している上に、ところどころ壁がべっこり凹んでいる。テレビでも投げつけない限り、早々あんな凹み跡は出来ないと思うのだが。いったいどんな生活をしているのか。部屋に上がってすぐ、左右にかき寄せた有象無象も、こうして座ったまま観察してみると本人の趣味が分かる。ジャンプに三ツ矢サイダーのペットボトル。食べ終えたカップラーメンのカスくらいゴミ箱に捨てろ、と思うが、自宅のキッチンに積み重ねたプラスチックの空き容器の山を思い出して、指摘するのをやめた。男やもめの生活なんて、似たりよったりである。それにしては、所々に散らばったチャイナドレスや、女物のハイヒールが気になるが。……あのハイヒールは女性がはくにしては少しサイズが大きくないだろうか。俺でも履けるような……。
「あ、ソレ?何?気に入った?履いてみる?」
 履いてみる?
「いや、ちょっとソレ、大きいサイズに見えたもので。……彼女、大きくていらっしゃるんですね」
「いやいやいやいや。どんな女だよソレ。俺でも履けるっつの。そんなに女のシュミ悪くないよ俺?っつーかそれ俺のだし」
「え」
 オカマ、には見えないが。実はそういう趣味があるのだろうか。俺と同じくらいの年じゃないんだろうかこいつは。結構若いのに、奔放なことだ。いや、若さゆえの暴挙か。
「ちょっと。今俺のこと変な目で見た?違うって。そんな人じゃないよ俺。優しい普通の大学生だよ。……ちょっと今は停学中だけど。」
 あまり突っ込んだ事情を知ってしまうと巻き込まれそうなので、最後の文句にはあえて突っ込まないでおくが。男はコタツに突っ込んだ俺の足を引っ張り出してハイヒールを履かせている。
「お、入った」
「いや、入った、じゃなくて……。何で履かせた?……まさか、そういう趣味なのアンタ?!」
 ずりずり、と後ずさったところに上からのしかかられて、「ヤバイ」と身構える。ギラギラと悪意のある目が光っている。まさか、ゲイなのかこいつは。嘘だろう。おでんに釣られて掘られるのか俺は。なんて愚かなんだ。
「ちょっとコレ、着てみろって。大丈夫、絶対似合うから。絶対」
 鼻息も荒く、さっきその辺に転がっていたチャイナドレスを持って男が迫ってくる。
「やめろ!訴えるぞ!」
「え、何を?人ん家上がりこんで一緒に夕飯食って何を訴えるってんだよ。おまわりさんも忙しいのよ?頭のおかしい可哀想な男だと思われて追い払われるのがオチよ?」
 ぷちぷちぷちぷちぷちぷち。
 猛烈な勢いでシャツが剥ぎ取られ、ズボンまで引き抜かれる。ジーパンを引き摺り下ろされまいと抵抗したせいで、ずり上がったトランクスから少し玉が見えている。
「あっ」
「ちょっとォ……変な声出さないでくれる?気持ち悪いな……」
「ええ?!酷くない?!人の服剥いでおいて気持ち悪いとか!酷くない?!」
「何勘違いしてんの。違うよ。俺はコレを着て欲しいだけ……よっと。ハイ!できた」
 すね下の生えた、図体のデカイオカマの完成である。
「うん。いい感じ。俺より似合うじゃん。モテるよ?人気ナンバーワン、確実だよコレ?」
 なにやら満足そうな男の様子に寒気を感じながらも、白いチャイナドレスに身を包んだ姿は我ながらそれほど悪くなかった。確かに。オカマとしてはそこそこいいんじゃないか俺……。
「うーん、やっぱすね毛は剃っとこう。」
「えっ?!」
 その辺に落ちていたチラシを敷かれ、スリットを思い切り捲られて剃刀の刃をあてられ、さすがに焦る。
「いやいや!困るから!彼女に聞かれたら困るし!」
「彼女なんて居ないでしょどうせ。アンタ、暗そうだし。大丈夫、大丈夫!ズボンはいてりゃバレないって。」
「そういう問題じゃないだろう!っつか何そのピンクローション!それラブホのおまけじゃないの?!」
 ぴちゃぴちゃと自分の足に塗られていく透明な液体は、どうみても速やかな性交のために使われるアレである。
「わがまま言わないでよ。コレしかないんだから。直に刃当てたら痛いでしょ?」
「つうか何ですね毛剃られてんの俺?おかしくない?……なんか、息が上がってきたんだけど……変なもん入ってんじゃないだろうなソレ」
 ローションを塗る音が遠のいて聞こえる。しかも、まずいことに、ちょっと気持ちいい……。
「え?何?そういうもんなのコレ?近所のオッサンに貰ったんだけど……え?大丈夫?」
 刃を当てられる感触がゾクゾクと鳥肌をたてる。鳥肌が立ったところに剃刀なんかあてられたら血まみれになるんじゃないだろうか……。怯えながらも、男が触れている太ももが気になって仕方ない。
「放せ……」
「あっ、ちょっと。動くなって。切っちゃったらどうすんの。アンタもヒゲ剃ってるとき手元が狂って切っちゃったことあるでしょ。痛いよアレ。あ!アブね!だから動くなって……」
 押さえつけようと太ももを掴む手がぬるぬると滑って快感を与えているのに気づいていないのだろうか。ちょっと、ソコは本当にやめて欲しいんだけど……洒落になんないんだけど……。
「くっ……」
 両肘を掴んで耐える。何をしているんだ俺は……。チャイナドレスなんか着せられた上に、すね毛まで剃られて……。変なローション塗りたくられて悶えているなんて……。だんだん情けなくなってきた。涙がでてくる。
「……あれ、泣いてんのアンタ?」
「泣いてない……」
「いやっ、ちょっ、ちょっとすね毛剃られただけだよ?大丈夫だって。そんなんで会社クビになったりしないって。彼女だってできるって。」
「う、ぐすっ……」
「あ、ほら、俺なんか痴漢と間違われて大学停学んなった上に親からの仕送り切られてもう大変……っていうかほら、別にアレ、なんだ、その……それ!そのチャイナ服あげるから!すごい似合ってるよアンタソレ!」
「お、俺なんか、どうせ……女顔だってい、いいたいんだろ……うぐっ、ちゅ、中学でも、女っぽいって苛められたし……」
「えっ?!いや、その……ち、ちがうよ、ほら、なんて言うの?凛々しいみたいな?チャイナ服着ても凛々しいみたいな?なんか武士っぽいよアンタ。髪も長いし」
「ば、ばかにしてるだろう……!お、俺のこと、チャイナ服着せられてちんぽ立てるへ、変態だって……おもっ、おもってるんだろう……!みっ、みんなに言いふらすんだろう……」
「うわっ、ホントだ!って、いやいや、あの!ホラ!えっと!言いふらすとか!何のことかわかんないけど!大丈夫だよ!もとはといえば俺だし!そう!俺が悪い!全ての罪は俺に!」
「あっ!」
 ギュッ、と力を入れて足を握られらせいで、上ずった声が出た。ちょっと先っぽから何か出ちゃったし、中学校で苛められた記憶まで蘇ってきて、もう何がなんだか分からない。
「うえええええ……うっ、うえええええ……」
 泣き出す俺を前に、天パ男が頭をかきむしって悶える。
「あーもう!ちょっと!泣かないでよ!俺だって生活ヤバイんだよ!家賃ぎりぎりだし?電気代止められてるからずっと携帯ガスコンロだし?家で少女泊めたら部屋の中むちゃくちゃにされるし?ここらでイッパツ儲けないともうあとないんだよ!だから、一緒に働いてくれよお!」
「えっ?」
「お前だけが頼りなんだよ。誰か新しい奴連れてこないと俺、バイトクビなんだよ。ただでさえキッチンからフロアーに出されることんなって戸惑ってんのにさ。だから、な?な?働いてくれるよな?」
「な……何の話をしてるんだ」
「だから……ゲイバーのフロアガールだよ!」
 ゴーン……。
 ドラの音が頭の中で鳴り響いた。冗談じゃない。天パ男の顔はもう涙と鼻水でぐしゃぐしゃで、切羽詰った感がひしひしと感じられる。
「おい、ちょっと……」
「……お前、ゲイにしちゃえばいいんだよ。なあ。そしたら、一緒に働いてくれるよなあ?」
「いやっ、あの、ぼっ、僕は……あ!そろそろエリザベスに餌やらないとな~!」
「いやいや。大丈夫だよペットのえさくらい。エリザベスもなんか探すって。動物の本能ってすごいんだよ。ほら、見てコレ。必要に迫られれば男相手でもちゃんと勃つんだよ……」
 ジーッ、とファスナーを下ろして男が取り出した股間はビクビクと脈を打っている。
「アンタ、チャイナドレス似合いすぎなんだよ……上半身だけ見てたらなんかこう、スレンダーな美女に見えなくも無いってか、目とか潤ませちゃって。言っとくけど、俺童貞だから。ちょっとヤってみたいかも、っていう欲望に火をつけたのはアンタだから」
「無理やり着せといて何勝手なこと言ってんだよ!俺知らないよ?!ゲイじゃないからケツの穴うんこまみれだよ?!最近仕事のストレスでちょっと下痢気味だし!下痢便つけるよ?!」
「汚ねっ!これからやろうってときにそういうこと言うなよデリカシーねーなあ!ちょっと萎えただろうが」
 ギンギンに張り詰めていたものが若干頭を垂れた。よし、この調子だ。己の清きバックバージンを守るためなら俺はどんな下品な言葉にも物怖じしな……。
 ずるり、と手が滑って、体が後方に傾いだ。「うおっ」露出した股間と股間の距離が次第に縮まっていき……。

「はあん……」

 腹に吐き出してしまった二人分の白濁を見つめて固まりながら、桂は自分の姿の滑稽さに絶望していた。すっかりしょぼくれた二人分の股間と、あたりに充満する生臭い匂いが虚しさをあおる。
 泣きはらした顔には涙と鼻水の跡が凝り固まり、困ったような気まずい表情の男はポツリと呟いた。
「……これ、洗って返してね」


つづく
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